研究課題/領域番号 |
22591940
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
上山 久雄 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30127013)
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研究分担者 |
村木 早苗 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90335175)
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キーワード | 先天色覚異常 / 錐体オプシン / スプライシング / ハプロタイプ / 遺伝子 |
研究概要 |
L/M視物質遺伝子アレーにおける遺伝子の並びが正常(先頭がL、後続がM)な先天色覚異常は78例(692例中)に達した。今年度は、変異では説明できない例を中心に解析した。 1.新たな変異としては、L遺伝子のTyr194STOP、Pro187Leu、M遺伝子のHis300Tyr、Pro307Leuを見出した。視物質再構成実験を行いいずれも吸収が認められないことを確認した。 2.これら以外の例に関しては、遺伝子全体を発現ベクターにクローニングし、培養細胞にトランスフェクション、RNAを抽出してスプライシングに異常がないか検討した。ノーザンブロットでは、1型2色覚のL遺伝子において、全長よりもやや小さいmRNAのみが認められた。RT-PCRとシーケンシングでさらに解析したところ、このやや小さいmRNAはエキソン3を欠失したものであることが分かった。 3.1型2色覚のL遺伝子のBbsI断片(エキソン2の途中からエキソン4の途中までを含む)を、野生型LオプシンcDNAのBbsIサイト間にクローニングしミニジーンを作製した。培養細胞にトランスフェクションし、RNAを抽出、RT-PCRで解析したところ、エキソン3を欠失したmRNAだけが認められた。正常産物を作るミニジーンとの間でのイントロン交換実験の結果、この欠失はエキソン3の違いによることが判明した。 4.正常産物を生じるミニジーンと、エキソン3(-)の産物をつくるミニジーンとの間には7か所の塩基の違いがあったが、すべて多型の範囲内のものであった。様々な塩基置換を導入して解析した結果、1型2色覚のL遺伝子が持つハプロタイプでのみエキソン3の完全欠失がみられた。従って、この1型2色覚では、エキソン3の特殊なハプロタイプによりスプライシングにおけるエキソン3の完全欠失が起こり、これが当該L遺伝子非発現の原因になっているものと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常な並びの遺伝子アレーを持つ先天色覚異常では、当該L遺伝子あるいは当該M遺伝子のミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、プロモーター変異、スプライシング変異などが考えうる。しかし、われわれの研究で、エキソン内の単なる多型と考えられるものが、その組み合わせ(=ハプロタイプ)によってはスプライシングに重大な影響を与える場合のあることが明らかになった。これは、先天色覚異常のみならず、他の遺伝性の表現型を理解する上で役に立つ視点を見出したものである。
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今後の研究の推進方策 |
エキソン内のハプロタイプによりスプライシングに重大な影響が出ることが判明したので、(1)その詳細な機序を明らかにする、(2)正常なスプライシングを誘導する手段を模索する、などの今後の研究の方向が考えられる。 プロモーターの塩基置換(これは今年度は力を入れなかった)に関しても同様の、(1)転写効率低下の詳細な機序を明らかにする、(2)転写効率を上げる方策を追求する、などの今後の研究方向が考えられる。
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