近年、近視は世界的に増加してきており、特に日本を含むアジアの若年層に大きな増加が見られることが様々な疫学調査によって示されている。近視は眼科疾患の中で高頻度かつ重篤な疾患である緑内障の危険因子であることも報告されており、特に国内の緑内障の大部分を占める正常眼圧緑内障の危険因子であり、かつ視野障害も進行しやすく、高度な障害となりやすい。したがって近視緑内障の病態の解明は緑内障診療における大きな課題であるが、近視乳頭の変化と近視緑内障の病態との関係について、今まであまり多くのことは検討されてこなかった。 本年、京都大学眼科にあるスペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)によって、近視眼の視神経乳頭およびその周囲構造の3次元画像データを多数例取得し、この得られたデータにより近視眼における視神経乳頭および辺縁部の形態変化を解析した。これにより、1)視神経乳頭は近視眼において下方に回旋しやすく、緑内障における上方視野障害に関与している可能性があること(2)近視による傍乳頭網脈絡膜萎縮の位置形状は視神経乳頭の形状と大きな関係があり、傾斜が強いほど大きくなりやすいこと(3)近視による傾斜視神経乳頭の楕円変化は、視神経乳頭の傾斜だけでなく、視神経乳頭自体が楕円形に変形していること(4)近視による傍乳頭網脈絡膜萎縮の深部構造において、強膜床のstep-configurationが視野障害に関係している可能性があること、などといった新知見を得、学会で報告した。いずれも現在海外雑誌に投稿中であるが、特に(2)に関しては最近Investigative Ophthalmology and Visual Sciences誌に掲載された。
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