研究概要 |
ドライアイが高齢の女性に多いことは人種を越えて共通の傾向であり、性ホルモンの関与が考えられる。我々が所有するKera3tTA3/tet-O-FGF7(Kera3tTA3マウス:眼瞼組織で過剰発現している線維芽細胞増殖因子7(Fibroblast growth factor 7, FGF7)をドキシサイクリンを腹腔内投与で停止できる)では2014 Teklad Global 14% Protein Rodent Maintenance Diet (Harlan Laboratories, Inc.米国より輸入)を使用すると、マイボーム腺と眼瞼上皮の過剰増殖は雄では100%おきる。そこで性ホルモンのFGF7への関与を明らかにするため、ヒト皮膚培養上皮細胞(Human Keratinocyte Cell Culture, HKCC)を用い、CnT-07 medium (CellnTec, Bern, Switzerland)をcollagen type1 coat 6 well plate (IWAKI, ABW-4810-010)で培養後、30% confluentの状態でgrowth factorのstarvationを24時間かけた。Progesterone (20nM), 17β-estradiol (20nM) 4,5α-Dihydrotestosterone (20nM)を作用させた2時間後に、human FGF7 (hFGF7:R&D 251KG/CF)を作用させ、リン酸化Erk P42およびP44の発現をWestern blot (Cell Signaling Technology4377)で経時的に発現量を比較したが、明らかな変化を認めなかった。HKCC性ホルモン(Progesterone, 17β-estradiol, 4,5α-Dihydrotestosterone)を20nM投与後30分でhFGF7 25ng/mlを作用させ、細胞の増殖分化を検討した結果、hFGF7投与後24時間で、HKCCはhFGF7 25ng/mlにより、1.6倍の増殖を示し、17β-estradiol, 4,5α-DihydrotestosteroneでさらにHKCCの細胞増殖は促進された。これに対しProgesteroneのみの投与では全く投与しないものに比べて変化がなく、17β-estradiol, 4,5α-Dihydrotestosteroneにより細胞増殖促進されたものもProgesteroneにより抑制されることが解った。現在、マイボーム腺上皮細胞の培養を準備しており、マイボーム腺上皮細胞においても同様の結果が得られることを期待している。マウスのマイボーム腺におけるProgesterone Receptor (PR; NR3C3)の報告なはく、ヒトの剖検例ににおいては数%程度陽性であったという報告があるのみで、生後10日目のKera3tTA3/tet-O-FGF7雄で免疫染色を行ったが陽性の結果は得られていない。Kera3tTA3/tet-O-FGF7雄をオリエンタル酵母社の食餌(MF)で飼育するとphenotypeにばらつきが見られる。これは食餌のなかにphenotypeを阻害する因子が混入しているものと考えられるが、オリエンタル酵母社は原材料を公表しておらず、エストラジオールの混入についてのデータは存在するが、Progesteroneについてはデータがなく、調査する必要がある。
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