研究概要 |
7-Tesla実験用MRI装置を用いてラットの大脳視覚領域における生体内代謝物質をMRスペクトロスコピーで捉える実験を試みた。また、高解像度3-TeslaMRI臨床装置を用いて視神経疾患患者における大脳視覚領域の生体内代謝物質の変化を捉えた。 1:実験用視神経障害モデルの作成とラットにおける大脳視覚領域の代謝物質の同定 実験モデルとしてメスのウィスターラット(生後4週)を用いペントバルビタールで腹腔麻酔し全身麻酔下で行った。大脳視覚中枢は全例左の第一次視覚領域に関心領域を設定し7-Tesla実験用MRI装置を用いてプロトンMRスペクトロスコピーを施行しN-アセチルアスパラギン酸、コリン、クレアチニンの代謝物質が捉えられた。また、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)20mmolをラットの右眼角膜輪部から1mm後極側の強膜より硝子体内投与し、視神経障害モデルのウィスターラットを作成した。今後、術後6,12,32週のMRスペクトロスコピーを正常ラットと共に施行し代謝物質の変化を解析していく予定である。 2:視神経疾患患者に対するMRスペクトロスコピーの施行 3-Tesla臨床用MRI装置(GE社製Signa HDx, 3.0T)を用いて、視神経疾患患者の大脳視覚領域におけるMRスペクトロスコピーを測定した。対象は、多発性硬化症による脱髄性視神経炎、抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎、レーベル遺伝性視神経症、アルコール中毒性視神経症で、視力が0,1以下の重篤な症例は、MRスペクトロスコピーで得られたN-アセチルアスパラギン酸、コリン、クレアチン、ミオイノシトールといった視神経組織内代謝物質が、昨年度の研究で得られた正常群の値と比べて低い結果であった。しかし症例数がまだ少ないため、今後の研究で症例数を増やし検討していく予定である。
|