研究概要 |
高解像度3-TeslaMRI臨床装置を用いて緑内障性視神経障害患者の大脳視覚中枢領域(V1)におけるプロトンMRスペクトロスコピー(1H-MRS)を施行し、視神経内代謝物質濃度と視覚障害の重症度について比較検討した。また、緑内障モデルラットを作成し、V1における代謝物質の経時的変化について実験用7-Tesla MR装置を用い1H-MRS を施行し解析した。 1:緑内障性視神経障害のV1における神経内代謝解析及び視覚重症度との関連性について 正常群にage matchingした緑内障患者13名に対し、V1の1H-MRSを施行し代謝物質の解析を行った。結果として代謝物質の中でN-アセチルアスパラギン酸(NAA)が緑内障群で有意に低下しており、それ以外の代謝物質では有意差はみられなかった。更に緑内障群の数を増やし(n=21)、V1のNAA濃度と視野障害の重症度(両側のHumprey静的視野検査におけるMD値の平均値)を比較したところ、R=0.679で相関を認めた。従って、緑内障では正常人に比べてV1内のNAAが減少しており、視野障害の重症なものほどV1内のNAA濃度は減少していることが推定された。 2:緑内障モデルラットにおけるV1代謝物質の経時的変化の解析 昨年度報告した緑内障性視神経障害モデルラット(生後4週)と正常ラットに対し、術後6,12,32週のV1領域における1H-MRS測定を7-Tesla実験用MRI装置を用いて行った。結果として、緑内障発症6週、12週後では、緑内障ラットと正常ラットのNAAに差はみられなかったが、発症33週では緑内障ラットにおいてNAA/Cr(クレアチン)比の減少が見られた。従って、緑内障モデルラットを用いた動物実験より、緑内障におけるV1のNAA減少は緑内障発症後期にみられることが示唆された。
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