研究概要 |
米国および日本においては、献眼された角膜はOptisol-GS中に低温で数日保存されたのち角膜移植に使用されている。 Optisol-GS中に保存され,角膜移植に使用した中心部以外の周辺部角膜の内皮について、バイアビリティを調べるPropidium Iodide (PI), Hoechst 33342, Calcein-AMを使用した3重染色を実施した。検査した28例で、総内皮細胞のうち、平均4.9%の細胞核がPIで赤く染色された。これらの細胞は細胞質がCalcein-AM陰性であり、死細胞の状態であることが分かった。さらに、PIで核が染色される細胞の組織学特徴を詳細に検討したところ、アネキシンに陽性であったことから、少なくとも一部はアポトーシスを起こしていると考えられた。また、それらの細胞は細胞骨格タンパクであるアクチンに結合するファロイジンに陰性、間葉系細胞の細胞骨格を構成する中間径フィラメントであるビメンチンと特異的に反応する抗ビメンチン抗体に陰性で、電顕用エポンブロック厚切り切片のトルイジンブルー染色では細胞質が淡染していた。以上より、核がPI陽性を示した細胞は細胞骨格等の細胞成分が乏しい状態であることが分かった。 培養細胞の共焦点レーザー顕微鏡観察において、死細胞は培養前には生細胞と同一面上に認められたが、培養1日後では生細胞より浮き上がった位置に観察された。さらにタイムラプス観察では、PI陽性の死細胞核が生細胞によって押しのけられるように移動し、脱落する様子が観察された。生体においても、内皮の死細胞は同様な脱落様式を示すと考えられた。 ウサギの角膜を固定し、抗アセチル化αチューブリン抗体を用いて蛍光抗体法により蛍光標識し、共焦点レーザー顕微鏡下で立体観察を行ったところ、角膜内皮細胞表面から伸びる1本の原始繊毛(シリア)が観察された。
|