研究概要 |
70歳未満の後期緑内障患者(両眼ともハンフリー視野検査中心24-2プログラム(HFA24-2)MD≦-12dB)に6名と年齢をマッチングした正常者36名に、視力検査、HFA24-2とエスターマン視野検査、緑内障患者用driving simuIator(緑内障DS)を施行し、緑内障DS上の運転事故に関与する視野因子を検討した。エントリーした緑内障患者に対して、自治医科大学眼科外来において、ドライビングシミュレータ(ホンダ・セイフティーナビ)を使用し、運転能力を評価した。これは、3次元コンピューターグラフィックス映像とサンプリング音源により、小スペースでも、実際の交通場面に近い検査シーンを作り出せるものである。一定速度で走行中に、路地からの車、停車車輌の影からの子供の飛び出し、信号の変化に気づくかどうか、また気づいてブレーキをふむまでの反応時間や反応のむらを測定することができる。 視野障害パターンごとの自動車運転能力を評価するために、エスターマンスコアおよび左右HFA24-2結果より両眼視野(integrated visual field、IVF)を作成し、上下半視野、20度内、10度内および10度内視野の6個のセクターで、「信号・標識の見落とし」「左右からの飛び出し事故」での事故件数との相関を調べた。 「信号・標識の見落とし」で7件、「左右からの飛び出し事故」で216件の運転事故が発生した。両場面の事故件数とエスターマンスコアは相関を示し(r=-0.51,-0.50,P<0.05)、「左右からの飛び出し事故」の事故件数は、IVFでの中心窩閾値(r=-0.54,P<0.01)、中心下方5度および10度内平均感度(r=-0.38,-0.49,P<0.05)と相関した。エスターマンスコア、IVFの中心窩閾値、中心下方10度内平均感度が緑内障患者の運転事故に相関する可能性があることが分かった。
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