糖尿病網膜症は進行性の神経変性疾患という側面を持つが、そのメカニズムは明らかでない。その原因として糖尿病網膜に生じる酸化ストレスに着目し、抗酸化剤であるルテインを用い網膜神経変性への影響を解析した。ルテインは糖尿病網膜に生じた活性酸素種を抑制し、視機能低下を回避した。ERK (extracellular Signal-regulated Kinase)の活性亢進と、それに起因する網膜内におけるシナプトフィシン、BDNF (brain-derived neurotrophic factor)の発現低下を認めたが、それらすべてがルテインの摂取により抑制された。さらに、糖尿病誘導後に見られた神経細胞死に起因する病理組織学的変化も、ルテインの摂取により回避された。本研究により、糖尿病網膜における酸化ストレスを起点とする視機能低下、網膜神経変性のメカニズムの一端を明らかにすることができ、抗酸化剤ルテインが、糖尿病により生じる視機能低下を抑制する可能性が示された。
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