当施設で作製している培養口腔粘膜上皮シートには羊膜を基質として用いているもの(AM(+)シート)と基質を持たないもの(AM(-)シート)とがある。臨床経過としてAM(+)シートと比較すると、AM(-)シートの移植後は、上皮下への血管侵入が少ない傾向が認められる。 これまで培養上皮シートの血管新生の促進・抑制因子のバランスが誘因と報告されていたが、当施設で作成した培養上皮シートでは同様の結果は得られていない。そのため、この傾向を解明するため、角膜輪部機能不全家兎モデルに培養口腔粘膜上皮AM(+)シートとAM(-)シートを各々移植し組織学的検討を行った。AM(-)シート移植眼では移植上皮シートと角膜実質の接着も良好で平滑な眼表面が得られたのに比べ、AM(+)シート移植眼では移植上皮シートと角膜実質との接着性が低く、所々に上皮シート下に上皮細胞侵入や周辺からの線維組織を伴う血管侵入が観察された。 以上のことから、臨床所見で認められる血管侵入は家兎モデルでも同様に観察され、移植した上皮シートと角膜との接着性を起因として、上皮シート下のスペースへの細胞浸潤、血管侵入を引き起こす可能性も考えられた。 現在、培養口腔粘膜上皮移植後に視力向上目的に行う二期的角膜移植時に摘出される角膜組織を収集中で、今後、血管新生因子等の発現様式について検討予定である。
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