研究課題
小児に網膜剥離をおこす代表的疾患であるCoats病について、網膜剥離の発症機序に関する検討を開始した。Coats病は小児に特有の非遺伝性の疾患である。眼底所見では網膜血管の拡張による滲出性の網膜剥離が特徴である。眼底所見が家族性滲出性硝子体網膜症と類似し、男児に多いことから、X染色体性家族性滲出性硝子体網膜症の原因遺伝子(NDP)の関与が想定されているが定説となるにはいたっていない。今回新たにCoats病症例4症例に対して手術中検体(硝子体液)中の細胞よりDNAを抽出し、NDP遺伝子に対してpolymerase chain reactionののち直接シークエンスを行い、NDP遺伝子異常の有無を調べた。4症例ともアミノ酸をコードする遺伝子配列には異常が見られなかった。今回の結果からは、NDPの関与を裏付けることができなかった。一方、1症例については前房水、硝子体液、網膜下液から検体を採取し、血管内皮成長因子(VEGF)の濃度を測定したところ、他の眼内増殖性疾患と比較して高値であった。網膜剥離の発症にVEGFが関与することが明らかとなった。小児に網膜剥離をおこす代表な遺伝性疾患である家族性滲出性硝子体網膜症について、新たな原因遺伝子TSPAN12を同定し、日本人での遺伝子異常の頻度を検討した(Kondo et al. Am J Ophthalmol, Epub ahead)。TSPAN12は、FZD4,LRP5の共受容体であることが近年明らかにされており、家族性滲出性硝子体網膜症の発症にはWntシグナルの障害が関与することが明確となった。TSPAN12遺伝子異常は既知の遺伝子と比べてわが国での頻度は少ないことがわかった。
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