研究概要 |
1.Synoptometerを用いてListing平面の3次元解析を試みる 代償不全型、および先天上斜筋麻痺を対象に,垂直・水平±30°,20°,10°,0°を含む計13箇所の眼位でSynoptometer(Oculus,Germany)を用いて回旋偏位を計測した。採取したデータから回帰直線の傾き(回旋偏位°/上下・水平角度°)を算出し,これをListing平面の傾きとして解析した。その結果,yaw planeにおけるListing平面の傾きの平均値(SD)は,先天性-0.057(0.12),後天性-0.056(0.13)となり,逆転した.pitch planeでは,先天性-0.037(0.037),後天性-0.072(0.019)となり,先天性の方が大きいのものの,いずれも上方が手前で下方が奥に傾斜した.これらの結果から,垂直・水平・回旋偏位の3つのパラメータからListing平面を3次元的に解析できた.yaw planeの結果から,先天上斜筋麻痺では下斜筋の拘縮が原因の下斜筋過動,後天性では上斜筋遅動、pitch planeの結果から,上斜筋の内転位で強まる下転作用と外転位で強まる内方回旋作用を支持する結果を得た. 2.高解像度MRIを用いて外眼筋手術のプリーに及ぼす影響を解析する 10名の上下・回旋斜視,および7名の正常被検者を対象に高解像度MRIを用いて冠状断眼窩MRIを撮像し,撮像画像から眼窩プリー(4直筋プリー)の位置を計測した.それを2次元座標に展開し,日本人の眼窩プリーの位置を計測し,欧米人のそれと比較した.つぎに,斜筋手術の4直筋プリー対する影響を解析した.その結果,4直筋プリーの位置は,欧米人のそれと有意差がないこと,また斜筋手術の4直筋プリーに対する影響は手術法で異なるものの,通常の斜筋手術の影響を受けないこと,眼球の解剖学的回旋偏位と4直筋プリーの傾斜角との間に相関があり,両者の回帰直線の傾きから回旋偏位と傾斜角が5:1の関係にあることを明らかにした.
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