本研究では、(1)マウス角膜上皮細胞由来の細胞株に、K12 遺伝子発現制御下で発現する蛍光レポーター遺伝子を組み込んだ細胞株を作製し、これを用いて(2)角膜輪部線維芽細胞にK12・PAX6陽性角膜上皮細胞へと分化誘導する活性があることを確認し(3)胚発生期のK12 の発現が始まる前後のマウス水晶体あるいは角膜実質に、K12・PAX6 陽性角膜上皮細胞へと分化誘導する活性があることを明らかにすることを目的としている。昨年度までのK12-蛍光レポーター遺伝子を組み込んだマウス角膜上皮細胞由来の細胞株を用いた解析では、ヒト角膜輪部線維芽細胞の培養上清には、既報の論文にあるような角膜上皮細胞への分化誘導活性を確認するには至らなかった.今年度は、既報論文に従い、マウス毛包 buldge より細胞を分離培養し、さらにその中からインテグリンα6陽性細胞の上皮幹細胞を得た。この細胞を用いて検証を行ったが、同様に、ヒト角膜輪部線維芽細胞の培養上清には角膜上皮細胞への分化誘導活性を確認できなかった。そこで、マウス水晶体を採取し、マウス角膜上皮細胞由来の細胞株およびマウス毛包バルジ由来の上皮幹細胞と共培養を行った。しかし、角膜上皮細胞への分化誘導活性の確認には至らなかった。さらに、平成22年度に見出した、角膜上皮細胞の性質の維持に有効な液性因子をヒト角膜輪部線維芽細胞の培養上清あるいは水晶体との共培養に添加した培養系でも、依然として角膜上皮細胞への分化誘導活性を認められなかった。そこで、マウス新生仔の角膜および皮膚を採取し、マイクロアレイ解析を行った。本マイクロアレイ解析はまだ解析の途中であるが、幼弱な角膜に特異的な因子を特定できると期待でき、引き続き検討を行う。
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