研究課題/領域番号 |
22591967
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
毛塚 剛司 東京医科大学, 医学部, 講師 (00287137)
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研究分担者 |
臼井 嘉彦 東京医科大学, 医学部, 助教 (50408142)
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キーワード | CGRP / 実験的自己免疫性視神経炎 / IL-10 / 免疫制御 |
研究概要 |
我々は、昨年度、実験的マウス視神経炎(experimental autoimmune optic neuritis:EAON)の病態解析を行ったところ、視神経局所に補体沈着後、ミクログリアの浸潤が初めに起こり、次いでT細胞の浸潤、アストロサイトの増加、ミエリン-オリゴデンドロサイトの減少が起き、最後に神経軸索の減少を確認した。また、ヒト視神経炎でもグリア細胞に対する抗体が重症度判定に重要であることを発見した。今年度は、calcitonin gene-related peptide(CGRP)遺伝子導入樹状細胞を用いた実験的マウス視神経炎(experimental autoimmune optic neuritis:EAON)における抑制メカニズムについて検討した。C57BL/6マウスの骨髄細胞をGM-CSFを用いて成熟樹状細胞に分化させた。CGRP遺伝子を作製するためにARPE-19細胞株のtotal RNAを抽出し、PCR法でcDNAを合成した。cDNA断片はプラスミドであるpCR3.1-2FLに挿入させた。CGRP遺伝子導入群としてpCR3.1-2FL-hCGRPを用い、エレクトロポレーション法によりCGRP遺伝子導入樹状細胞を作成した。また対照群としてCGRPを含まないpCR3.1-2FLを用い、同様の方法により遺伝子導入細胞を作成した。EAONはMOG35-55をC57BL/6マウスに強化免疫することによって発症させた。遺伝子導入細胞の生存率は70%で、遺伝子導入効率は50%であった。遅延型過敏反応はCGRP遺伝子導入成熟樹状細胞の注入により抑制された。免疫14日目に発症したEAONは病理組織学的に対照群の89%で確認されたが、CGRP遺伝子導入群では67%にとどまった。CGRP遺伝子導入群から得られた脾細胞培養上清中のサイトカインは対照群と比較してIL-10が高値で、IL-17が低値であった。これらの事実から、CGRP遺伝子導入細胞による遺伝子治療の機序にはIL-10やIL-17の関与が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に研究は進展している。一方、最近の臨床研究により、他の神経グリア細胞(アストロサイトなど)のタンパク抗原なども視神経炎の原因に挙げられており、追加で研究を行っている。また次年度でヒト検体を用いた研究を行う予定であったが、患者検体が集まったため、前倒しで研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
神経グリア細胞の一つである、オリゴデンドロサイトを標的にした視神経炎の解析だけではなく、より最近の臨床に即したアストロサイトを標的にした視神経疾患に対する解析も本年度は追加で行う予定である。トランスレーショナルリサーチに即した研究を行うため、ヒト患者検体を用いた解析も同時に行う予定である。
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