研究概要 |
"眼表面粘膜上皮細胞による眼表面炎症制御機構の解明"を最終目標として、本年度は、ヒト結膜上皮細胞におけるPG受容体、特にPGE受容体に着目して、その発現ならびに機能について解析した。PGE_2は、免疫学領域において単球や樹状細胞のLPS誘導性のサイトカイン産生を抑制する事が報告されているが、上皮細胞における報告はほとんどない。研究代表者は、結膜上皮細胞における各種PGE_2の発現ならびにその機能を解析した。健常ボランティアよりbrush cytologyにより採取した細胞を用いてRT-PCRを行い各種PGE_2受容体(EP1-4)mRNAの発現を解析したところ、ヒト結膜上皮細胞では、EP2,3,4 mRNAが発現していることが確認された。結膜弛緩症患者の切除結膜から分離培養したヒト培養結膜上皮細胞(PHCjE)を用い、polyI : C刺激にて各種サイトカイン産生を誘導し、さらに、polyI : C添加と共に、PGE_2または各種PGE2受容体刺激剤を添加し、サイトカイン産生抑制作用をELISAならびに定量PCRにて解析したところ、PGE_2は、polyI : C刺激によって誘導されたIL6, CXCL10, CXCL11, CCL5の産生を抑制した。また、CXCL10, CXCL11, CCL5産生はEP2ならびにEP3アゴニストによっても抑制されたが、IL6についてはEP3アゴニストによってのみ抑制された。一方、EP4アゴニストは、いずれのサイトカイン産生も抑制しなかった。以上の結果は、ヒト結膜上皮細胞において、PGE_2はEP2ならびにEP3を介してpolyI : C誘導性IL6, CXCL10, CXCL11, CCL5の産生を抑制することを示している。よって、ヒト結膜上皮細胞に発現しているEP2ならびにEP4は、眼表面炎症を抑制していると考えられた。
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