研究概要 |
本研究の目的は,外科的介入を必要とするような重症気管軟化症を低侵襲に治療する方法を開発することである.塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの成長因子を,ドラッグデリバリーシステム(DDS)を駆使して効果的に気管軟骨に作用させる手法を用いる. 平成22年度は,摘出したラット気管の外圧を変化させた時の,気管内腔の変化を観察することが可能な評価実験系の構築を行った.この一部は平成21年度川野小児医学奨学財団の助成によるものであるが,その改良,および測定プロトコールの確立を行った.本実験系を用いることによって,ラット摘出気管に外圧を加えていくと膜様部が膨隆して前壁に近づいていき,三日月状につぶれていくというヒト気管軟化症と同様の変化を観察することができるようになった.また,外圧と断面積の量的関係の解析が可能となった.7wラットを用いて正常値の取得を行い,外圧を40cmH2Oまで上昇させると気管内腔面積は非加圧時の約60%まで減少することを確認した.今後,本実験系を用いて,b-FGFで成長を促進した気管の機能評価を行っていく. また,平成23年以降の計画である,b-FGF含有マイクロスフェアー吸入のための基礎的研究をマウスによって行なった.マウスへ気管内挿管を行い,気管内にb-FGFを投与し,気管軟骨の成長促進について検討した.その結果,2.5μg/回を5日間投与することで,投与4週後には気管軟骨の成長による軟骨壁の肥厚を組織学的に確認した.また,b-FGF投与群は,挿管のみのSham群と比較して,有意に内腔面積の増大を確認した.これらのデータは,マイクロスフェアー吸入量を算出する上で重要な基礎的データとなりえる.
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