研究概要 |
本研究の目的は,外科的介入を必要とするような重症気管軟化症を低侵襲に治療する方法を開発することである.塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの成長因子を,ドラッグデリバリーシステム(DDS)を駆使して効果的に気管軟骨に作用させ,成長促進させる手法を用いる. 平成23年度は,b-FGFをゼラチンスポンジに含ませた徐放製材をラットの頸部気管膜様部背側に留置することで,気管軟骨の成長促進が得られるのかどうかを検証し,その最適濃度を決定するための実験を行った.3週齢,雄のWistarラットの頸部気管背側にb-FGF徐放化製材(0.5μg,5μg,50μg)を留置し,4週間後(7週齢)に摘出した頸部気管と同週齢正常ラットの気管を病理学的に比較検討した.その結果,気管内腔面積はb-FGF5μg群で最も増加しており,50μg群では狭窄が認められた.一方,気管軟骨の厚さは用量依存性に増加していた.以上より,気管を成長促進する最適濃度はb-FGF5μgであることがわかった. また、さらなる低侵襲治療を行うために、気道内に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を投与して、気道軟骨の成長促進について検討した。4週齢マウスの気管内にbFGFを投与し、気道軟骨の肥厚、軟骨長の成長促進を確認した。また、気道内に徐放化bFGF製剤を投与することで、気管軟骨の成長を確認したが、必ずしも投与量によって軟骨成長が促進されていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究計画は,bFGFの気管軟骨成長促進効果に関する基礎的データを蓄積することであった.具体的には,(1)気管軟骨を成長促進させる最適bFGF量の決定,(2)bFGFによる効果持続期間の検証,(3)bFGFの最適な投与方法の確立を予定していた.(1)を達成することができたが(3)は継続中であり,(2)に関しては平成24年度へ持ち越しとなった.
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