椎弓の欠損を主徴とする非致死性脊髄奇形である二分脊椎症は、主に椎弓欠損のみの潜在性型と椎弓欠損に髄膜あるいは脊髄と髄膜の両方が巻き込まれる嚢胞性型とに大別される。一般に潜在性型は無症状であるが、嚢抱性型は種々の程度の神経障害を示す。これまでの二分脊椎症に関連する研究では、この神経障害の病態は臨床知見に基づいたものがほとんどであり、実験に基づく知見は臨床知見に比べて少ない。したがって、その詳細な病態については不明な点が未だ多く残されている。 我々はこれまでに二分脊椎症で見られる神経障害の病態を詳細に解析することを目的として、ヒト二分脊椎症患者に似た後肢運動障害を示す二分脊椎モデル動物を開発した。平成22年度では、これまでの研究において見いだされた運動神経細胞の発生遅延現象について考え得る疑問点の解決を行った。すなわち、これまでの研究で使用していた運動神経細胞のサブクラスマーカーであるIslet-1のモノクローナル抗体(クローン39.4D5)は、Islet-1だけでなくIslet-2も同時に検出するので、Islet-1のみを選択して結合するモノクローナル抗体(クローン40.2D6)を用いて再実験を行う必要が出てきた。また、同時に脊髄奇形領域における運動神経細胞サブクラスを染め分けも再度実行し、これらの数の変化及び脊髄内での神経細胞の分布変化を追跡した。 本年度に得た結果は、これまでの結果を支持するものであった。そこで、これまでの結果を論文として発表した。また、詳細な検討実施したところ、奇形例の運動神経細胞の発生遅延は約1~2日程度ではなく、わずか24時間程度であることが明らかとなった。今後、この遅延現象と本モデルの歩行障害の関連性を明らかにする必要があると考えている。
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