本年度はラットを用いた自己小腸再生モデルの確立を目標に、モデル作成を行った。 雄性inbred Lewisrat(体重250g)を用いたが、小腸の全長は約100cmであり、この50%にあたるmid gutの50cmをThiry-vella loopとし両端はstomaとして皮膚に開放した。 それ以外の残存小腸は端々吻合し、経口摂取はnormal chew dietとし、特に制限しなかったこのThiry-vella loopの小腸に対して、欠損部位の長さを2mmづつ2cmまで延長し、一カ所につきポリグリコール酸フェルトをマトリクスとした場合にどの程度まで再生、延長できるかについて検討した。 術後、一ヶ月後に再生予定部位を検索したところ、神経ペプチドであるボンベシンを投与しない群では、4mm以上の欠損部位を再生するには至らなかったが、ボンベシン投与群(30μg/kg/day)では1.5cmまでの欠損部位を再生することができた。また小腸欠損部位の数に関しては現在までに、3カ所まで同様の再生が可能なことが確認できた。 現在、再生部位の腸管に対して、粘膜上皮、粘膜下リンパ球の組成、神経ネットワークの連続性などについて組織学的な検索を行っている段階である。 今後、これらの検索結果により、再生した部位が正常の腸管と遜色ない構造をもつことが明らかになれば、経時的にその部位を増やすことによって、生体内で正常な栄養吸収、消化管運動能を有した自己小腸を再生・延長できる可能性がある。
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