癌の転移・再発・治療抵抗性に大きく関与すると注目されている癌幹細胞は、従来、癌細胞と呼ばれてきた細胞の中にわずか数%しか存在しないが、自己複製能とともに腫瘍を構成するさまざまな分化系統の癌細胞を生み出す能力をあわせもつ細胞であり、癌を悪性化する。癌を根治するためには、この癌幹細胞を特異的に殺傷しなければならない。小児肝臓の悪性腫瘍のうち最も罹患率の高い肝芽腫に対し、「癌幹細胞の概念」に基づいた新たな治療法開発を進めていくうえで、癌幹細胞の分離・同定、解析は非常に重要な課題となる。平成22年度は、培養実験モデルを用いた肝芽腫幹細胞の分離と同定を行った。 ヒト肝芽腫細胞株(HuH-6 clone-5)から癌幹細胞を分離するにあたり、細胞株が適切なモデルであるか、培養した細胞を免疫不全マウス(NOD/SCID)に移植し、生体内における腫瘍形成能を確認した。さらに、肝芽腫培養細胞をslde population(SP)法を用いてフローサイトメーターにより解析し、SP細胞とnon-SP細胞をソーティングした。これら2群を免疫不全マウスに移植して腫瘍形成能を調べ、さらに、形成された腫瘍を病理学的に調べるとともに、組織培養を行って腫瘍細胞の増殖能ならびにその性状を確認した。 SP細胞を免疫不全マウスに移植した場合は腫瘍が形成されたが、non-SP細胞の場合は腫瘍形成がみられず、SP細胞は高い腫瘍形成能を有し、この細胞集団に癌幹細胞が含まれていることが示された。
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