研究課題/領域番号 |
22591989
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
安部 正敏 群馬大学, 医学部, 講師 (80302462)
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キーワード | 創傷治癒 / 細胞生物学 / 筋線維芽細胞 / 増殖因子 / アポトーシス / Akt / ケロイド |
研究概要 |
本研究は、創傷治癒における線維芽細胞と筋線維芽細胞の挙動の相違を明らかにすることで、より効率的な創傷治療を開発するための基礎的研究である。前年度までの研究により、b-FGFは線維芽細胞に比較し、筋線維芽細胞で高率にアポトーシス誘導し、その機序として、PI3K→Aktのシグナル伝達系の関与の可能性が示唆された。今回はさらに他のシグナル伝達経路が存在するか否かを検討した。方法として、ヒト正常真皮由来線維芽細胞をtransfoming growth factor-β(TGF-β)存在下で培養することにより筋線維芽細胞を得た。得られた細胞を用い、b-FGFのアポトーシス誘導能を線維芽細胞と比較検討した。その結果、筋線維芽細胞においてはRhoおよびRhoキナーゼ阻害薬前処置により、b-FGFのアポトーシス誘導は完全に抑制された。つまり、筋線維芽細胞のアポトーシスにおいては、PI3K→AktとRho→Rhoキナーゼという2つのシグナル伝達系の関与の可能性が示唆された。そこで、一歩進めて、実際のケロイドに関してこのアポトーシスが誘導されるか否かを検討した。ケロイド病変部由来ヒト筋線維芽細胞について、今回までの同様の検討を行った。しかしながら、実験的に誘導した筋線維芽細胞と異なり、ケロイド病変部由来ヒト筋線維芽細胞では高率のアポトーシスの誘導は起こらず、さらに前述したシグナル伝達系の関与はみられなかった。創傷治癒の質的変化の機序に関しては更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に筋線維芽細胞の特性に着目したシグナル伝達系の異動を明らかにしており、ケロイドでは効果がみられない塩基性線維芽細胞増殖因子が、創傷治癒過程の成熟期において、apoptosis 誘導による筋線維芽細胞の機能変化をもたらすことにより、臨床的に優れた創傷治癒の質的向上をもたらす薬剤であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
更なるシグナル伝達系を明らかにする目的で、今後は筋線維芽細胞および線維芽細胞における塩基性線維芽細胞増殖因子の効果を遺伝子あるいは蛋白レベルでの網羅的検討を行いたい。その検討で明らかになった候補遺伝子もしくは蛋白について、その関与の有無を確認する作業を行う。
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