研究概要 |
昨年までの研究で、われわれはリンパ管-静脈吻合術中に切除されたヒトリンパ管断端をサンプリングし、プロスタノイドレセプター5種類(TP,IP,EP2,EP4,DP1)に対する抗体を用いてこれらの発現を組織学的に検討した。これらのプロスタノイドレセプターはそれぞれ動脈・静脈に発現していることが確認されており、いずれも血管の収縮・拡張機能に関与しているとされている。ヒトリンパ管ではプロスタノイドレセプターもリンパ管における発現が認められた。発現様式は動脈/静脈のいずれとも相同であることを明らかとした。この成果を受け、ワイヤーミオグラフシステムによりリンパ管の生理機能の解析および薬理学的機能解析を目指した。 リンゲル液中にワイヤーミオグラフシステムにヒトリンパ管をフッキングし、0.5gの負荷をかけた。収縮弛緩の安定を待ったが攣縮様の波形が継続して得られたが、薬剤への反応を解析するにはいたらなかった。そこで、本システムの安定を求める為に、ラットより動脈を採取し、これを用いて実験モデルの構築を行う事とした。まず、ラットを深麻酔下に腹部大動脈および総頸動脈を採取した。これを約1mmの輪切りとし、リンゲル液中でワイヤーミオグラフシステムにフッキングした。1gの負荷をかけた後、約30分で安定が得られたのでノルエピネフリンを添加したところ、速やかな収縮反応が認められた。収縮がプラトーに達した後、NOのキャリアであるニトロプルシドナトリウムを添加した所、弛緩反応が認められた。今後、動脈でもリンパ管と相同のプロスタノイド受容体の発現が認められているため、これらを添加し、モデルの確立を目指す。
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