基礎研究:脱細胞化神経を用いたクロスリンクモデルの作成を試みた。ラットより大腿神経を採取した。これを高張塩溶液に24時間、震盪下に浸漬し、その後6日間、PBS中で震盪した。これを採取し組織化学的に評価を行った。HE染色ではエオジンに染色される核は認められなかった。次に、凍結融解法および界面活性剤法により脱細胞化も行った。これらに対してHE染色を行った所、界面活性剤法では脱細胞化は認められたが凍結融解法では核の遺残が多く認められた。さらにこれらサンプルをそれぞれラットに移植した後に採取し、組織学的に評価を行った所、高張塩溶液による脱細胞化を行った例および界面活性剤法により脱細胞化を行った例では炎症細胞の浸潤無く、軸索の伸展を認めたが、凍結融解法により脱細胞化を行った例では炎症細胞の著明な浸潤を認め、また、移植組織の融解を認めた。さらに抗原の遺残について検討を行った所、界面活性剤法では抗原が除去出来ていたが、残る2つの方法では遺残が認められた。これらより、少なくとも高張塩溶液による脱細胞化法では多くの細胞成分は除去できるが、一定の遺残を認める事、またその遺残の程度は凍結融解法よりも少なく、また、高張塩溶液による遺残量では免疫反応を生じにくい事が示された。今後、さらに長期での脱細胞化組織の抗原性や維持、軸索伸展の効率について検討を行う必要がある。 臨床研究:頭頸部腫瘍切除後にループ型神経移植による顔面神経即時再建術を施行した連続する10症例を検討対象とし、以下の項目について調査した:年齢、性別、原疾患、既往症・基礎疾患、力源神経、再建分枝、放射線治療の有無、化学療法の有無、術前麻痺スコア(40点法)、術後麻痺スコア(40点法)、術後経過観察期間(月)。今回の検討では術後病的共同運動をスコア化していないが、多くの症例で病的共同運動が生じるものの軽度であるという印象を得た。
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