研究課題/領域番号 |
22591994
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山本 康孝 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 特任准教授 (20362882)
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研究分担者 |
久留 一郎 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60211504)
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キーワード | 再生医療 / 脂肪細胞 / 動脈硬化 |
研究概要 |
動脈硬化症の末梢病変では、従来の治療法が奏功しない重症患者が下肢切断を余儀なくされている。下肢切断回避法として骨髄細胞を用いた血管再生療法が本邦で2000年より開始され、有効性・安全性が報告されているが、従来の骨髄細胞に比し、皮下脂肪細胞は容易に安全に採取でき、繰り返し採取可能なことから次世代の再生医療の有力な細胞供給源として期待される。昨年度、我々は皮下脂肪由来再生細胞(ADRC)の血管再生の安全性・有効性をマウス下肢虚血モデルにおいて証明した。体性幹細胞の性質についての詳細な評価やメカニズムの解析が今年度の検討課題である。特に骨髄細胞ではリスクファクター存在下で血管新生の効果が減弱することが知られているが、臨床応用上重要な事項でありADRCにおいても検討した。ラットにおいて、高血圧・肥満・老化・糖尿病(耐糖能障害)モデルを作成し、それぞれADRCの回収数・性質・血管新生能を評価した。高血圧モデルはアンギオテンシンIIを浸透圧ミニポンプ(Alzet社)を用いて4~8週間持続投与することにより作成したが、2か月間の観察期間においては血圧の影響は皮下脂肪には生じていなかった。肥満モデルは高脂肪食負荷にて肥満を誘導した。このモデルにおいてはインスリン抵抗性を獲得しており、脂肪の炎症も認められ、フローサイトメーターにおいてCD68,45が増加し、CD34は低下していたが、血管新生能には影響がなかった。老化モデルは通常飼育にて、12~18ヶ月齢まで加齢させたが、細胞の採取に調整が必要であり来年度以降の課題とした。糖尿病モデル:ストレプトゾトシン投与による糖尿病モデルを作成したが、体重や血糖値が安定せず皮下脂肪の採取が困難であり、来年度以降、モデルを考慮しつつ再検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADRCによる血管再生療法の研究は採取方法をはじめ、既報の論文が少ないが、その基礎的な技術開発から着手し、細胞の機能評価を終了できた。本年はその細胞の保存・機能維持に関する重要な情報にまで研究を広げることができ、おおむね順調に進展していると考えている。また当初は、ヒトADRCによる細胞機能評価を予定していたが、当該研究機関における"ヒト幹細胞を用いる臨床試験に関する指針"への申請に時間を要し、来年度に向けて施行予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、臨床応用(鳥取大学医学部付属病院)に向けた基礎的な情報の確立が重要である。平成23年度中に"ヒト幹細胞を用いる臨床試験に関する指針"への申請が受理され、本年度(平成24年度)中に、その臨床応用が開始予定である。この被験者からの細胞などを保存し、解析することから、基礎的な検討と実際の臨床でのデータの整合性を確認することができる。これらのデータは、他大学においても試行中・検討中のヒトADRCによる再生治療に重要な情報となるため、様々な検体(ADRC)を評価することが可能な組織・ネットワークづくりも課題である。
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