研究課題/領域番号 |
22591995
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
難波 祐三郎 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (00335605)
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キーワード | 生殖臓器移植 / 生殖細胞導入 / 性同一性障害 |
研究概要 |
本研究では従来のSun Leeが報告した精巣移植の方法を飛躍的に改良した。それは移植時にモデルの大動脈を犠牲にすることなく、精巣動静脈(0.3~0.5mm)を血管柄として使用するためその挙上はいたって容易であり、さらに血管吻合は厳径部の皮下で浅下腹壁動静脈と吻合するため腹腔内操作が最小限で低侵襲となる。レシピエントモデルの精巣は摘出している。卵巣移植においては、卵巣動静脈が太いため大動脈を利用して移植を行った。レシピエントモデルの卵巣は摘出している。 平成23年度の研究では本移植法を用いて、同性モデル間での精巣あるいは卵巣移植を行い、レシピエントモデルに移植された精巣内でめ精子形成とテストステロン分泌を調査し、卵巣移植モデルにおいては移植された卵巣からのエストロゲンの分泌とレシピエントモデルの妊娠の可能性を調査した。 移植された精巣の組織標本を観察すると間質細胞には血管および間細胞が認められ、精細管基底層の精祖細胞から内腔へ向かって細胞が成熟し、精子形成が認められていることが分かった。本実験では全10例中7例で精子形成が認められた。 一方、テストステロンの分泌は移植群では全例で認められたが、精巣摘出のみのコントロール群では全例でテストステロンの分泌を認められなかった。精子形成が認められなかった3例について組織標本を観察すると、精細管はやや委縮し、精祖細胞からの正常な成熟過程を確認することができなかった。しかし、間質には血管および内分泌機能を担う間細胞も認められホルモンを分泌するのに耐える機能を残していることがわかった。 卵巣移植モデル群5例全てでエストロゲンの分泌を認めた。また内1例が妊娠し胎児を確認した。卵巣摘出のみのコントロール群5例全てでエストロゲンの分泌を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に確立した新方法による精巣移植が、ほぼ全例で成功するようになった。そして2年目の研究目標であった移植精巣における精子形成とテストステロン分泌が確認できた。また卵巣移植後のラットにおいては妊娠を確認した。このように本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究の最終目標である異性間の生殖臓器移植と、Cell traffickingの確認を行いたいと思っている。すなわち昨年度まで同性間で行っていた精巣移植をSex mismacth型に施行し、レシピエント由来の精子形成とテストステロンの分泌を確認したいと考えている。
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