本年度は本研究の最終目標である異性間での生殖臓器移植を行った。実験ではLEWラット(8週齢)をドナーとレシピエントに使用し、マイクロサージャリーを用いて卵巣摘出したメスラットに精巣を移植した。この時、移植精巣のY遺伝子関連タンパクが抗原となりうるため、FK506を使用した。 結果、移植した精巣は固くなり正常の柔らかさは失われていたが、テストステロンの分泌は認められた(コントロールとしてFK506を使用しないモデルを作成したが、やはりテストステロンの分泌は認められた)。また、精子の形成は認められず、精細管の変性が起こった。レシピエント組織と接触している部分(外周部分)は黒く、蛍光染色で光って染まった。また精巣内の血管や精細管も蛍光染色で光って染まるため、レシピエント由来の遺伝子を持った組織が発現している可能性がある。即ち、本実験で細胞導入(Cell Trafficking)が起こった可能性を示唆している。ただし、雄LEWラットの精巣をGFP-TGラットに移植して、光る精子が一つでも発現すれば明らかに細胞導入(Cell Trafficking)が起こった証明になるが、その実証は得られなかった。 Y遺伝子が抗原になる実験系として、追加実験として異性間での皮膚移植を行った。すると雌ラットの皮膚を雄ラットに移植すると生着するが、雄ラットの皮膚を雌ラットに移植すると拒絶された。とすれば雌LEWラットの卵巣をGFP-TG雄ラットに移植する時にはFK506は不要となる可能性がある。 本実験の発展形として、同性間生殖臓器移植における細胞導入の解析を行いたいと思っている。
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