皮弁生着や外傷性の皮膚潰瘍では皮膚のviabilityを決定するうえで皮膚微小循環は重要である。この皮膚微小循環に影響する要因 として、感染、血腫、過圧迫、non-reflow現象、皮弁のterritoryなどが知られている。ほかにもさまざまな全身的な要因があるが、特に糖尿病においては動脈硬化症、末梢神経障害、易感染性に加えて、皮膚微小循環の障害が高頻度で存在し、皮弁手術の障害となる場合や、糖尿病性の難治性潰瘍ではその治療に難渋する場合が見られる。日本では近年における食生活や生活様式の変化に伴い、糖尿病や高脂血症が増加する傾向にあり、またメタボリック症候群としても注目を集めている。糖尿病の皮膚微小循環障害では血管内皮細胞の障害や機能不全が問題となる。また血管内皮細胞の障害の機序としては、NADPH Oxidaseを介した活性酸素の役割が次第と明らかになってきている。 皮弁に静脈うっ血や動脈虚血が生じると、皮弁が部分的にあるいは全体が壊死に陥る。これらを避けるために外科的な処置や薬剤投与が試みられるが、一度うっ血や虚血が生じるとその回復は困難なことがある。さらに、上記のように皮膚微小循環に影響がある糖尿病や高脂血症が合併する場合には回復がより困難になることが予想される。静脈うっ血の治療の一つに医療用ヒルの適応があり、22年度はヒルによる皮弁の瀉血治療がどのように皮膚微小循環に影響するかを検討した。23年度は経皮酸素分圧、経皮二酸化炭素分圧などを測定することで基礎的なデータを収集した。24年度は高血糖の条件下での瀉血治療の効果を検討したが、正常との違いが検出できなかったため、25年度は引き続き瀉血治療の効果に関する実験を行った。
|