研究概要 |
本研究では、膜結合型増殖因子である表皮増殖因子(EGF)ファミリーのうち、Heparin-binding EGF-like growth factor (HB-EGF)がリンパ管新生を誘導し、リンパ浮腫改善につながることを見出し、本因子による新たなリンパ浮腫の治療戦略を創生することを最終目的としている。この実験系の確立のために、当該年度では本実験系において創傷治癒の亢進、血管・リンパ管新生の亢進が期待される実験個体として、表皮特異的HB-EGF誘導発現マウス(K5 Dox HB-EGF TG)の作製を行った。 表皮特異的HB-EGF誘導発現トランスジェニック・マウスの作製に当たっては、通常の交配では胎生期の着床に問題があり系統維持ができなかったため、遺伝子発現誘導システムを用いて作製した。まず、pTRF-Tight vector (Clontech, Inducible Gene Expression System)を用いて、テトラサイクリン・レスポンシブ・エレメント下にHB-EGF cDNAをコードするベクターを構成し、これによりトランスジェニック・マウス(TRE-HB-EGF TG)を作製した。また、Tet-On Advanced vector (Clontech)をベースに、CNVプロモーターを表皮特異的ケラチン5(K5)プロモーターに置換したベクターを構成し、これにより表皮特異的に遺伝子を発現させるトランスジェニック・マウス(K5-rtTA TG)を作製した。 これらのトランスジェニック・マウスTRE-HB-EGF TGとK5-rtTA TGを交配することによって得たダブルトランスジェニック・マウスが、表皮特異的HB-EGF誘導発発現マウス(K5 Dox HB-EGF TG)である。なお、遺伝子誘導にはドキシサイクリン(Dox)を用いた。 現在、作製したダブルトランスジェニック・マウスK5 Dox HB-EGF TGに対してDoxを投与し、HB-EGFの発現とDoxの至適濃度を確認中である。
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