研究課題
骨欠損の再建に対し、幹細胞を用いた人工骨の作成が研究されつつある。しかしいまだ大きな骨組織を得るまでには至っておらず、より効率的な培養系の開発が必要である。骨代謝において、破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成はそれぞれが独立して行われているのではなく、バランスを保つべく破骨細胞、骨芽細胞の双方がシグナルを出してクロストークを行っていることが示唆されている。その因子の一つとしてsphingosine 1-phosphate(以下S1P)に注目した。本研究の目的は、間葉系幹細胞から骨芽細胞が分化し、骨形成を行う過程におけるS1Pの機能と、そのシグナル伝達経路を解明すること、さらに骨培養へ応用することである。平成22年度は間葉系幹細胞におけるS1P受容体の発現をRNA、タンパクレベルでの解析を行った。また、S1Pは化学遊走因子としての機能を持ち、Tリンパ球などの細胞がS1Pの濃度勾配にしたがって移動することが知られているが、この機能が間葉系幹細胞に対しても働くか検証するため、S1P濃度が段階的に異なる培地を準備し、間葉系幹細胞のchemotaxisが濃度依存性になっているか確認する。さらに受容体の下流のシグナルを解析し、それぞれの受容体がどのような機能を担うか検討した。リンパ球など他の細胞においては、S1P受容体の下流にp43/44MAPキナーゼ、PI3K/Akt、 Ras/ERK、 NF-κBなどのシグナルがあり、これらを介して細胞の分化、増殖、アポトーシス抑制、細胞遊走などを生じることが知られている。これらの各シグナルの阻害剤を用い、間葉系幹細胞におけるS1P受容体の下流のシグナル伝達とそれぞれの受容体の機能を解析した。
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形成外科
巻: 53巻増刊 ページ: S184
Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery
巻: (in press)
日本形成外科学会雑誌