研究概要 |
「知覚神経異常を伴う慢性疼痛の存在下では、皮膚創傷の治癒が遅延している」という仮説を検証する実験をおこなっている。昨年度より継続して知覚異常部の創傷治癒モデルとして、ラットを用いて検討を行った。背部の脊椎神経後根の切断モデルの作成を行った。背部正中で皮膚および皮筋を切開し,左側の傍脊柱筋を剥離してTh8~Th13まで肋骨を露出した。さらに肋間を剥離しTh8~Th13までの肋間神経を露出し,これらを切離した。これにより背部に広範囲の知覚異常部を作成できる。神経切断の術後7日目に、知覚異常部の背部に直径15mmの円形の皮膚全層欠損を作成した。健常な部位に作成した創傷の治癒過程と比較検討した。皮膚創傷の上皮化率、収縮率についての経時的評価では知覚麻痺による影響を受け創傷治癒は遷延した。さらに知覚障害部位の創傷へSubstance P(以下SP)の局所投与を行うと治癒の改善がみられた。実際の神経因子の創傷部での動態を検証するため、免疫組織化学的検討を行った。本実験では外科的に肋間神経を切離することにより脊髄後根ガングリオンから末梢へのSPの軸索輸送を阻害した。脱神経直後は末梢に貯蓄されたSPが実験に影響する可能性を考え,免疫染色でSPが枯渇する時期を確認した。その結果脱神経してから7日目以降は末梢にはSPは存在せず,以後少なくとも21日目までは周囲からの神経の再支配などでSPが現れないことも確認した。現在、mRNAレベルの検討を行っている。
|