研究概要 |
[目的]創傷治癒過程の主体である線維芽細胞の由来は一部が血球由来間葉系前駆細胞(Fibrocyte: Fb)由来であると判明してきた。しかしFbの発現特異性やその誘導を構成する微小環境成分は解明されていない。今回CD34, Leukocyte specific protein-1(LSP-1), Procollagen-I(Pro-I)の二重染色で同定されるFbの血管内外での発現特異性や血管を介在としたケモカイン誘導因子の関与を検討した。 [方法]皮膚切除材料非病変部組織を蒐集し、創傷治癒過程を5期に分類して各病期においてCD34, LSP-1, Pro-I二重染色からFbの発現性と、Fb発現に関与するケモカイン分子を解析した。さらに、ラットで皮膚創傷治癒モデルを作成し、Fbの経時的変化を観察した。 [結果と考察]ヒト正常皮膚創傷治癒では、各創傷治癒期においてFbは血管内(Circulating)と血管外(Infiltrated)とでは全く異なる発現様式を示し、それらの由来や分化様式が異なることが示唆された。さらに、α-SMA染色から分類した毛細血管、細小動静脈、動脈におけるCXCL12, 6Ckine, MCP-1の発現を解析すると、細小動静脈でCXCL12の発現増加が確認でき、CXCL12のレセプターであるCXCR4は、CD34+細胞に共発現していた。よって、骨髄細胞からCirculating Fbへの分化誘導においてCXCL12発現性細小動静脈の血管構築による微小環境形成が重要であると考えられた。特に、Circulating Fbの血管外への誘導にCXCL12-CXCR4の相互作用が関与していると考えられた。ラット皮膚創傷治癒では、Fb発現はヒトと同様に推移すると考えられたが、サンプル数が少ないため、さらなる検討を要すると考えられた。
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