現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性腎傷害モデルとして、ラット左腎の腎動静脈を30分クランプする虚血・再灌流障害モデルを作成した。腎の虚血・再灌流モデルでは、代謝性アシド-シス、肺水腫、血中クレアチニン濃度や乳酸値の上昇、腎や肺組織のサイトカイン(TNF-α, IL-1β, IL-6)のmRNAの上昇が認められた。 1)心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の前投与:腎の虚血・再灌流障害モデルに対し、腎動静脈クランプ前5分からANPを0.2μg/kg/minの速度で投与した場合には、代謝性アシド-シス、肺水腫、血中クレアチニン濃度や乳酸値の上昇、腎や肺組織のサイトカイン(TNF-α, IL-1β, IL-6)のmRNAの上昇を抑制することができた。また、腎の虚血・再灌流障害モデルで、腎では血管内皮細胞にTNF-αが発現し、肺では気管支上皮細胞にTNF-αが発現し、ANPはこれを減弱させた。これより、ANPは腎ー肺のクロストークを抑制する作用があることが示唆された。 2)ANPの後投与:腎の虚血・再灌流障害モデルに対し、腎動静脈クランプの5分後からANPを0.2μg/kg/minの速度で投与した場合には、やはり代謝性アシド-シス、肺水腫、血中クレアチニン濃度、血中カリウム濃度、乳酸値の上昇や、腎、肺、心臓の組織の炎症性サイトカインであるIL-6のmRNAの上昇を抑制することができた。また、腎の虚血・再灌流障害モデルにおいて、肺の組織のNF-κB発現や左腎のIL-6の発現は増加したが、ANPはこれらを抑制した。これよりANPは虚血・再灌流障害後に投与しても腎や肺に対する保護効果や腎ー肺のクロストークを抑制することが示唆された。
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