研究実績の概要 |
【背景】腎虚血-再灌流による急性腎傷害(IRI-AKI)や、造影剤腎症(CI-AKI)は重症患者の予後に影響する。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)はNa利尿作用や抗炎症作用を持つ。【目的】ANPが、IRI-AKI、CI-AKIを軽減するかを検討。【方法】1. IRI-AKI:(1)ラット左腎茎をclamp後、生食あるいはANP (0.2μg/kg/min) を投与。3h後に屠殺し、腎、肺、心臓のTNF-α, IL-1β、IL-6 のmRNAを測定。(2)ラット両側腎茎をclamp後、乳酸リンゲルあるいはANP (0.2μg/kg/min) を3h投与。血中TNF-α、IL-1β、IL-6濃度を測定。2. CI-AKI:ラットCI-AKIはindomethacin(10mg/kg)、NG-nitro-L-arginine methyl ester (10 mg/kg)、造影剤iopamidol (2.9 g Iodine/kg)を静注して作成。Iopamidol 投与前に生食(2 ml/h) あるいはANP (0.2μg/kg/min) を2h投与。ラットはケージに戻し、水分なしで餌は自由に24h投与。血中クレアチニン、K、乳酸濃度は、0h、1.5h、24hで測定。【結果】1.(1)片腎茎clamp: ANPはIRIによる代謝性アシドーシス、肺水腫、血中乳酸、クレアチニン、K上昇、腎や肺のTNF-α、IL-1β、IL-6 mRNA上昇を軽減。(2)両腎茎clamp: ANPは血中IL-1β、IL-6濃度の上昇を軽減。2. ANPはCI-AKIによる血中クレアチニン、K濃度の上昇を軽減。【結論】IRI-AKIでは、ANPの直接作用だけでなく抗炎症作用により腎と肺の傷害を軽減できた。ANPが腎―肺間のクロストークを妨げることを示唆する。ANPはCI-AKIを軽減した。
|