対象:心停止後症候群の意識障害に対し、低体温療法を施行した患者は、本年度、心肺停止例44例中入院した10例の内、5例であった。重症頭部外傷例には、本年度は4例に施行した。また1例、重症脳髄膜炎の脳腫張に対し同療法を施行した。 結果:心停止後症候群における、34℃台の低体温療法中の肺酸素能の低下は中程度であったが、好中球殺菌能は低下しない一方、貪食能の低下は軽微であった。 頭部外傷に対する33℃台の低体温療法中、とくに復温中の肺酸素化能が著明で、好中球貪食能の亢進を伴う症例があった。しかし、好中球殺菌能の有意な低下は見られなかった。 髄膜脳炎例に対する低体温時には、ステロイド投与によると思われる好中球貪食能の著明低下を認めたが、一方、全経過を通して、肺酸素化能の著明低下は認められなかった。この際も好中球殺菌能は、低下しょかった。 今回の結果より、本研究の申請時にも挙げたが、以下の作業仮説が成立する。すなわち、 1. 脳損傷の種類によって、低体温療法に対する生体反応に差異がある可能性があること。 2. 低体温の程度により生体反応が異なり、復温時の好中球反応性も異なる可能性がある。 3. 低体温療法時の肺酸素化能低下に対して、ステロイドが有効である可能性がある。 以上の仮説をさらに、来年度に向け症例数を増やし検討して行く計画である。 さらに、今回新たに好中球殺菌能と貪食能における各種刺激に対する反応の差が明らかとなり、その機序解明も興味ある点であり、新たな研究テーマとなりうる。
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