対象:心停止後症候群の意識障害に対し、低体温療法を施行した患者は、本年度、心肺停止例38例中入院した12例の内、8例であった。重症頭部外傷例は、本年度14例中入院した12例の内、5例に施行した。 結果:心停止後症候群における、34℃台の低体温療法中の肺酸素能の低下は中程度であったが、好中球殺貪食能の低下は軽微であった。 一方、前年度頭部外傷に対する32-33℃台の低体温療法中、とくに復温中の肺酸素化能の低下が著明で、好中球貪食能の亢進を伴う症例があった。本年度は頭部外傷に対して34℃台の低体温療法を施行したところ、経過中肺酸素化能の低下は軽微であった。 健康成人から分離した好中球に対し、30℃、33℃、35℃、37℃の環境下で、好中球機能を検討したところ、30℃、33℃で好中球貪食能が低下したが、35℃、37℃では、その底下を認めなかった。 以上の結果より、以下の可能性が示唆される。 1.脳損傷の種類によって、低体温療法に対する生体反応に差異がある可能性がある。 2.低体温の程度により生体反応が異なり、復温時の好中球反応性も異なり、肺障害の程度も異なる可能性がある。 3.温度帯によって、健康成人の好中球貪食能が低下することが分かり、その抑制は35℃あたりから回復する可能性が示唆された。この結果は、脳損傷例における低体温療法の復温時に見られる好中球機能の亢進と関係している可能性がり、今後の更なる検討が必要である。 以上の仮説を、来年度も症例数を増やし検討して行く。
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