研究概要 |
研究1:脳損傷における低体温療法時の臓器障害とデキサメサゾン(DX)の効果:重症脳損傷患者で、常温群(歴史的対照:16例)と低体温群(10例)で、DX5mg/dayを療法中投与すると、低体温群で復温時の肺障害が軽減される傾向を認めた。 研究2:低体温療法時の合併症発現における好中球の役割:低体温療法を施行した脳損傷例4例から採取した好中球の機能(殺菌能および貪食能)を測定した結果、常温群(1例)では両機能は変化なく、低体温群(2例)で、低体温期には貪食能が低下したが、復温時に逆に亢進し、酸素化能の低下と一致していた。一方、DXを低体温療法中投与した1例で、復温時の貪食能の亢進はなく酸素化能も維持された。 研究3:健康成人8名、計14回の採血後好中球を採取し、 in vitro での好中球機能(殺菌能および貪食能)を各培養温度で検討した。結果:殺菌能(%)は、30, 33, 35, 37℃で96±1.9, から 96±2.1と殆ど変化しなかったのに対し、貪食能(%)は、それぞれ、61±7.3, 65±6.9, 71±7.5, 73±6.4, 73±6.7と培養温度依存性に変化した。今回判明した好中球における温度による機能差出現の機序解明が重要である。 研究4:健康成人(8名)から好中球を採取し、30℃、33℃、35℃、37℃の各培養温度帯で、DXを添加(0, 0.5, 1, 2mg)し、その際の好中球機能を検討した結果、37℃でDX 1と2mg添加時に貪食能が約40%抑制された。この結果から、研究2で明らかとなった低体温群の復温時の貪食能の亢進に対し効果ある可能性が示唆される。現在、その他の培養温度で検討を計画している。
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