研究概要 |
一酸化炭素中毒症例で問題となっている慢性期(4~5週後)に出現する遅発性中枢神経障害(delayed neuropsychiatry sequellae:DNS)の出現メカニズムと出現の予測法の開発を目的に、一酸化炭素中毒発症後亜急性期における大脳白質神経線維脱髄の程度と変化、様々な代謝物質の出現と変化をMRIを用いて検討した。 一酸化炭素中毒と診断された50症例に対して、発症後2週間目に3.0テスラMRIを用いて拡散テンソルMRI(DTI)によるfractional anisotropy (FA)値の測定,1H-magnetic resonance spectroscopy (MRS)によるcholine, creatine, N-asparaaspartate (NAA)、Lactateの測定、さらに脳脊髄液中のmyelin basic protein(MBP)濃度の測定を行い、これらの結果と臨床経過を比較した。 DNSを呈する症例群は、慢性期神経障害を呈さない症例群に比較して、FA値は有意に低値であった。大脳白質の半卵円中心部におけるFA値と脳脊髄液中MBP濃度は負の相関があった。MRSでは、DNS症例は有意にCholineが高値を示したが、NAAに有意差はなく、lactateの出現はなかった。 これらの結果から、DNSは大脳深部白質の脱髄性変化が主な病理学的原因となっていることを明らかにした。さらに、DTIによるFA値の測定、MRSによるcholineの測定が、DNS発症の予測に有用であることを実証した。
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