研究課題/領域番号 |
22592021
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
小林 順 城西大学, 薬学部, 教授 (20153611)
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研究分担者 |
大竹 一男 城西大学, 薬学部, 助教 (50337482)
村田 男 城西大学, 薬学部, 助手 (80610667)
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キーワード | クラッシュ症候群 / 虚血再灌流 / 一酸化窒素 / 亜硝酸 |
研究概要 |
以前より継続していたクラッシュ症候群(crush syndrome:CS)のラットモデルが確立し、その成果がJournal of Trauma(70:1453-1463,2011)に掲載された。このモデルを使い、さらに23年度はその生存率改善の効果を生化学的に解明することができた。またその成果は、第2報目として、今回、再びJournal of Trauma(2012年掲載予定:in press)に掲載することができた。このラットモデルでは下肢の5時間虚血がクリティカルで4時間未満と6時間以上では死亡率が0~10%となる。虚血時間が短いと再灌流による全身炎症が起こらず、虚血時間が長いとno reflow現象によりやはり全身炎症が起こらず、生命予後については良好になる。5時間虚血はその非常に微妙なwindowをとらえていた。この虚血時間後の再灌流は横紋筋融解(血中ミオグロビン、カリウム、CPK、LDH等測定)を引き起こし、全身臓器や血管内皮での白血球接着等による炎症を引き起こし、遠隔臓器での多臓器不全を誘発した。これは臓器(筋、肺、腎臓)のmyeloperoxidase活性を測定して、評価した。さらに今回、再灌流前の虚血骨格筋では、亜硝酸濃度が著明に低下し、酸素を必要とするNO合成酵素(NOS)が作動しえない虚血下で亜硝酸の還元(低酸素下各種酵素的、非酵素的還元が知られている)によるNO産生を示しており、虚血筋でのNO bioavailabilityを維持する上で亜硝酸が消費されていたことを伺わせる所見であった。再灌流前の亜硝酸の投与は、虚血筋内亜硝酸濃度を正常まで上げ、結果、再灌流後の横紋筋融解の減少、循環不全の改善、血圧の維持、アシドーシスの矯正に繋がり、死亡率の優位な低下に至った。さらに今回は、亜硝酸投与量を100、200、500μM/kgで検討し、濃度依存的救命効果(CSコントロール:24%、100μM/kg:36%、200と500μM/kg:64%)を示すことができた。亜硝酸は最終的には血圧降下を示さずむしろ循環動態改善による昇圧効果が見られた。ただし500μM/kgはメトヘモグロビン血症を認め、臨床的使用は200μM/kgが適切と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
臨床系英文雑誌に2報にわたり成果を報告することができた。亜硝酸の効果は、この疾患の根本的原因を改善する効果に繋がることがわかり始めてきた。更なる、治療薬の発見とdrug deliveryを含めたその応用に関わる非常に重要な成果を今回得ることができたと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
今回の成果によりクラッシュ症候群の病態の解明にかなり近づくことができた。現在、並行して新たな薬剤を検討中である。これはかなりの救命効果があり、臨床応用に非常に有用と考える。このモデルを使い、その生化学的データを現在、集積中である。亜硝酸の更なる作用機序解明と並行して、新たな薬剤の治療効果と臨床応用も考慮中である。
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