研究課題/領域番号 |
22592027
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研究機関 | 防衛医科大学校 |
研究代表者 |
木下 学 防衛医科大学校, 医学教育部・医学科専門課程, 准教授 (70531391)
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研究分担者 |
関 修司 防衛医科大学校, 医学教育部・医学科専門課程, 教授 (80531392)
齋藤 大蔵 防衛医科大学校, 防衛医学研究センター, 教授 (90531632)
小野 聡 防衛医科大学校, 防衛医学研究センター, 准教授 (30531355)
宮崎 裕美 防衛医科大学校, 防衛医学研究センター, 助教 (30531636)
西川 可穂子 防衛医科大学校, 病院, 助教 (20345416)
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キーワード | 免疫不全 / クッパー細胞 / 好中球 / 活性酸素 / マウス熱傷モデル / 細菌感染 / NK細胞 |
研究概要 |
1、熱傷後MRSA感染と対策:熱傷マウスでは好中球の貪食能やMRSA殺菌能が低下していた。一方、熱傷の有無にかかわらずMRSA感染では好中球による菌排除が極めて重要であり、好中球減少マウスではMRSAへの感染抵抗性がほぼ消失することが分かった。IL-18は好中球を直接刺激活性化し、貪食能や活性酸素産生能を亢進させると共にMRSA殺菌能をも有意に増強させた。熱傷マウスにIL-18を投与しておくと、好中球機能が活性化することによりMRSA感染での菌排除が亢進し感染予後が改善した。このように熱傷後の好中球機能不全とIL-18による好中球機能活性化が熱傷後MRSA感染に有効であることが明らかになった(Infect Immun 2011;79:2670-80)。 2、熱傷後の好中球機能解析とその制御が熱傷後感染に与える影響:熱傷前にSODを投与すると、熱傷直後の好中球の活性酸素産生亢進が抑制され肺障害が軽減されたが、熱傷1週間後に発生する免疫不全病態の改善や大腸菌感染予後の改善は認められなかった。一方、熱傷後にSODを投与すると、熱傷直後に発生する好中球の活性酸素産生亢進と肺障害は抑制し得なかったが、熱傷1週間後の大腸菌感染は有意な改善を認めた。これにはKupffer細胞の貪食機能亢進が関与していた。 3、Kupffer細胞の機能解析と亜分類:マウスの肝臓には、活性酸素産生や異物貪食能が旺盛なCD68陽性のKupffer細胞とサイトカイン産生能が高いCD11b陽性Kupffer細胞が存在することがわかったが、熱傷後の肝臓ではCD68^+Kupfferi細胞が減少しCD11b^+Kupffer細胞が増加することが分かった。熱傷後にIL-18を投与しておくと、CD68^+Kupffer細胞が増加しCD11b^+Kupffer細胞が減少することが明らかとなり、これが大腸菌排除の亢進と感染予後の改善をもたらしていた(Burns 2011;37:1208-15)。 4、Proteomicsによる熱傷後の肝臓や肝単核球での蛋白合成の解析とこれが免疫能に及ぼす影響:熱傷5日後のマウスの肝臓では明らかに非熱傷マウスの肝臓とは異なり鉄などの微量金属を捕捉する蛋白質が増加する傾向がProteomicsによる解析で認められた。さらに増加した蛋白の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの肝臓に活性酸素産生や異物食食能が旺盛なCD68陽性Kupffer細胞とサイトカイン産生能が高いCD11b陽性Kupffer細胞が存在することを明らかにした(J.Hepatol.2010;53:903-10)。熱傷後はこの異物食食能が旺盛なCD68^+Kupffer細胞が減少し、炎症性サイトカイン産生能が高いCD11b^+Kupffer細胞が増加することが分かった(Burns 2011;37:1208-15)。これが熱傷後感染時の高サイトカイン血症と菌貧食排除の低下に繋がったと考えられた。また、熱傷後は好中球機能が細菌食食能含め低下していることが分かり、これがMRSAなど好中球によって排除される菌の感染増悪に繋がっていた(Infect Immun 2011;79:2670-80)。さらに、このような病態にIL-18が有効であることも明らかになった。活性酸素消去剤(SOD)などが、このような熱傷後の複合免疫不全病態に有用性があるかを現在検討中である。また、合成CRPがヒトにおいてもマウスと同様な抗炎症効果を発揮できるかをヒト末梢血単核球を用いて検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトにおいても肝臓Kupffer細胞にマウスと同様なKupffer細胞の亜型が存在するかを確認する予定である。また、合成CRPもヒトにおいてマウスと同様な抗炎症効果を持つかヒト末梢血単核球を用いて詳細に検討する。現在、熱傷などの重度侵襲病態における細胞性免疫能や液性免疫能、好中球機能の不全病態が明らかになりつつあるが、その免疫賦活化手段としてのIL-18療法やSOD療法、CRP療法などが、実際のヒト臨床においてどの程度有効な治療対策手段となり得るか、副作用はないのかを多方面から検討する予定である。
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