研究課題
本研究の目的は、1.ヘルトビッヒ上皮鞘の断裂機構、2.上皮鞘断裂後の上皮細胞の運命、を解明することである。3週齢ラット上顎第一臼歯のパラフィン切片を作成し組織学的,免疫組織化学的に検索した。1についてデスモゾーム関連蛋白を分解するADAM10とKLK7、基底膜成分を分解するMMP7の三酵素に対する免疫染色を行った。いずれの免疫反応も,未断裂,および断裂しかけたヘルトビッヒ上皮鞘に強い反応が認められた。弱いものの周囲の歯小嚢の細胞にも反応は認められた。以上から,上皮鞘細胞が上記酵素により自ら接着装置を破壊し上皮鞘が断裂する,歯小嚢細胞もそれを手助けする可能性がある,ことが示唆された。2について上皮鞘は断裂後、マラッセの上皮遺残となる、アポトーシスを起こす,上皮間葉転換(EMT)によりセメント芽細胞となる,との説がある。アポトーシスをTUNEL法により,EMTの可能性を組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNALP)およびケラチンの二重免疫染色により検索した。TUNEL法では上皮鞘細胞のアポトーシスは認められなかった。上皮鞘末端の上皮細胞はやや強いTNALP免疫反応を示すが,歯根形成が進むにつれて小型化し反応は弱くなった。一方,歯小嚢細胞は歯根形成に伴い大型化し強い免疫反応を示すようになり,上皮鞘の断裂開始領域では明らかに歯小嚢細胞のほうが上皮鞘細胞よりも強いTNALP免疫反応を示した。上皮鞘が断裂しセメント質形成が始まった領域ではセメント芽細胞とみなされる細胞はTNALP免疫反応を示すがケラチンには反応しなかった。もし、EMTが起こっているのであれば、この領域ではTNALPとケラチンともに陽性の細胞(二重染色される)が存在すると思われる。以上の所見は上皮鞘細胞は断裂後にマラッセの上皮遺残として存続し,EMTを起こす可能性は低いことを示唆している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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