口腔癌において、タバコとアルコールが重要なリスクファクターであるが、近年はヒトパピローマウイルスも発癌の原因の一つであるといわれている。一方、口腔領.域における細胞診の普及率はまだまだ低いが、擦過細胞診による口腔癌検診も日本各地で行われはじめている。これまで我々が、子宮頸部病変の解析をもとに口腔病変におけるヒトパピローマウイルス感染を同定する方法を検討した結果から、少なからずヒトパピローマウイルスが口腔癌の発生に関与する可能性が考えられた。本研究では細胞診にもそれを応用し、細胞診断およびヒトパピローマウイルス検出システムを構築することを目的とし、具体的には、口腔白板症と扁平上皮癌症例からえられた検体を用いて細胞診の診断基準を確立し、また、同時にヒトパピローマウイルス遺伝子の解析を行い発癌との関連について調べた。 今年度、研究分担者が所属する診療科から、扁平上皮癌あるいは前癌病変が疑われる症例の細胞診の依頼は6件あった。ブラシを用いた擦過材料から、パパニコロウ染色標本を作製し、細胞診断を行った。また、ブラシに付着した残りの検体からDNAを抽出し、コンセンサスプライマーを用いたPCR法と、倉敷紡績株式会社に依頼して行ったHPV typing法によりヒトパピローマウイルスの検出を行った。細胞診に関しては、後に行った組織診との間に食い違いはみられなかった。ヒトパピローマウイルスに関しては、今までの症例は全て陰性である。 今後は、症例を迫加し検討を加えていく。
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