研究概要 |
骨折治癒時の間葉系細胞は、ATDC5に近似した細胞動態を示す。ATDC5の培養系での動態変化の追求に先だって骨折治癒時の閥葉細胞の増殖活性の変化を、増殖マーカーとして知られる抗PCNA抗体を用いて検討した。1,5ヶ月齢のSDラットを用い、骨折後5日、15日の時点で標本を得、常法に則って脱灰後バラブラスト包埋し8μmの連続切片を作成し、染色した。計測は抗体陽性細胞数を母集団で割り、陽性率として比較検討した。観察は、1)骨折部のカルスを覆う未分化間葉系細胞集団、2)その外側を覆う骨膜様細胞集団、3)カルス瑞から2,5mmまでの骨膜細胞集団、4)カルス端から3mm以上遠位の骨膜細胞集団に分けて行い、統計処理して比較した。その結果、骨折後5日では1)=89,3±5,5%、2)=14,5±4,8%、3)=65,8±5,4%、4)=6,5±2,6%、骨折後15日では1)=88,6±7,8%、2)=19,2±7.0%、3)=54,0±13,9%、4)ほ=4,0±1,4%であった。このことから、骨折治癒時の骨形成は骨折部中央から近遠位方向に約2,5mmの範囲で起こること、カルス部の骨膜細胞は増殖活性が低く、カルス部から上下に2,5mmの範囲では骨膜細胞の増殖活性が高いこと、さらにカルスから遠ざかれば骨膜細胞の増殖活性は極端に低くなることが判明した。即ち、骨折治癒時の骨膜細胞の増殖には部位特異性があることが示されたし、骨折部が極端な肥大化をせずに治癒するのは、恐らくADAMTSファミリーのようなアグリカナーゼの分解作用が重要であると推測された。次に、24穴マルチウェルを用いてATDC5を培養し、STK3培地に換えて軟骨細胞分化を誘導し、経時的に固定して免疫染色を施した。その結果、培地を変えた0日目は、体節形成に関与しているNotchl-4、細胞増殖マーカーであるPCNA発現細胞は70%を越えていたが、3日目では全てが半分以下に落ち込んだ。5日目ではNotch2,3発現が倍加したものの、その他は低いままに留まった。この傾向は7日以降も継続した。このことから、軟骨細胞分化にNotchシグナリング特にNotch2,3が何らかの役割を担っていることが推測された。
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