研究課題/領域番号 |
22592037
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山合 友一朗 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00158057)
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研究分担者 |
水川 展吉 岡山大学, 岡山大学病院, 講師 (00263608)
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キーワード | ATDC5 / Notchファミリー / 軟骨芽細胞分化 / 細胞増殖 / STK3培地 / PCNA |
研究概要 |
体細胞型多分化能細胞ATDC5の分化メカニズムは不明な点が多い。一方、Notchは膜貫通型リセプターあるいは転写因子として、形態形成での細胞増殖と分化を調節する因子として知られる。本年度は、ATDC5細胞から軟骨芽細胞への分化の過程でのNotchファミリーの役割を分析する目的で、発現解析を試みた。ATDC5細胞は10%FBS添加EIDF培地(ニプロ)で大量培養しながら、適宜24穴マルチウェルに移し、細胞密度が底面の60%を越えたところで、STK3培地(DSファーマ)に交換して1~9日間培養し、軟骨芽細胞分化を誘導しつつ1%パラフォルムアルデヒドで経時的に固定してマルチウェル中で、抗PCNA抗体、抗Notch1~4抗体を用いた免疫染色を施した。その結果に基づき、Notch1~4の効果を検討するために、STK3培地にそれぞれの抗体を2.5μg/mlの濃度で添加して7日間培養し、適宜アルデヒド固定した後、抗PCNA抗体を用いて免疫染色し、増殖率を算定した。その結果、抗体無添加群と同様の形態変化を示したのは、抗Notch1抗体添加群のみで、抗Notch2~4抗体添加群では細胞数が増えたこと以外は特に変化が認められなかった。即ち、Notch1は捻体の存在下では細胞の塊状集合体が増加し、増殖活性は抑制気味であったことから、細胞分化には影響せず、別の役割が推測された。一方、Notch2~4は抗体の存在下では細胞分化が抑制され細胞増殖は高かったことから、分化に関連した役割を持つことが示唆された。脛骨形成時では、骨端成長板の増殖軟骨細胞層後期から初期の肥大軟骨細胞層にかけて、Notch1とNotch4がほぼPCNA発現部位の近辺に発現するのみで、Notch2とNotch3は発現しなかったことから、ATDC5細胞を人為的に軟骨芽細胞に分化誘導する際には、Notch2,3の関与が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATDC5の軟骨芽細胞分化誘導にNotch2,3の関与が推測されるデータが得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
使用制限の厳しいiPS細胞や自家移植用の貴重な細胞で実験する前に、ATDC5で軟骨芽細胞分化誘導のタイミングを決めることは重要なことである。今後は培地に抗体を添加するタイミングを詳細に検討したい。また、今年度の実験で得られた細胞の集合塊が軟骨芽細胞のものか、骨芽細胞のものかを判断するための染色や遺伝子発現の検討が必要となる。24年度は最終年度でもあるが、この研究は骨の修復に導入する細胞の導入方法の検討につながる重要なものであるから、継続が望まれる。
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