前年度に引き続き、ATDC5で軟骨芽細胞・骨芽細胞への分化誘導を検討した。クラスター形成を迅速、効率的に行うことを課題とした。まず、ATDC5をSTK3培地で15日間培養して形成したクラスターをADAMTS9抗体で染色すると、クラスターのみならず非クラスター部分も染色された。そこで培地にNotch1~4抗体を添加して発現を抑制し、5日と7日培養群でクラスター密度を比較すると、Notch1、4抗体群はNotch2、3抗体群と比較して有意に密度が高かった。即ち、Notch1、4はクラスター形成の抑制を示唆した。PCNA抗体染色で増殖活性を検討すると、無添加群と比較して有意に高かったのはNotch4抗体群であったが培養日数間で有意差は無かった。Notch4は増殖の抑制も示唆された。更に同培養系でコラーゲンα1(II)、ADAMTS9、PCNA抗体の染色性を比較すると、Notch1抗体群では個々の抗体染色性はクラスター部分で高かく、Notch2抗体群では、個々の抗体染色性に有意差は無かった。Notch3抗体群では、細胞が集合した部位でのADAMTS9抗体の染色性が有意に高く、それ以外では有意差は無かった。Notch4抗体群ではクラスターの形成はNotch1抗体群に準じて高く、どの抗体染色性もクラスター部分で高かったが、PCNA抗体の染色性は非クラスター部分の方が高かった。ADAMTS9抗体、Notch抗体添加5日培養系で、コラーゲンα1(II)、α1(I)抗体の染色性を比較した。どの染色性もADAMTS9抗体群が最も高く、これは二相性発現の反映と思われた。一方、Notch4はα1(II)を促進し、α1(I)は抑制する可能性が示唆された。これらの結果から、ATDC5は培地にNotch1、4、ADAMTS9抗体を組み合わせることで骨芽細胞と軟骨芽細胞を選択的に誘導可能と示唆された。
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