研究概要 |
当該年度には、マウス胎生期下顎骨では、HIF-1αは骨基質に埋入し始めている骨細胞やすでに埋入している骨細胞で強く観察された一方、GLUT3とGLUT5は弱いながらも骨細胞に反応を示した。24週齢の成獣マウスでは、歯槽骨表面の結合組織に毛細血管が観察され、骨改造の痕跡を境に浅層と深層の骨層板構造が異なっていた。HIF-1α、 HIF-2αおよびORP150は新たに付加された骨の骨細胞にはまったく反応がみられないのに対して、深層の骨細胞ではHIF-1αが強く、HIF-2αが弱く観察された。一方、GLUTsは新たに付加された骨でみられず、より深層の骨細胞でGLUT3の強い反応を示した。しかし、そのGLUT1、3、5のいずれを利用しているかは、組織の特異性あるいは胎生期と成獣での栄養環境の違いなどに依るものと考えられる。さらに、成獣マウス歯槽骨では、骨改造の痕跡を境により深層の骨細胞は骨改造で骨細胞ネットワークが断裂し、低酸素低栄養の苛酷な環境に陥ったことを示唆した。他方、同様の環境にある軟骨内骨化でのHIFs、 GLUTsとMCTsの発現を検討し、HIF-1αは前肥大軟骨細胞と肥大軟骨細胞にみられたのに対して,HIF-2αは前肥大軟骨細胞のみにみられた。GLUT3が前肥大軟骨細胞と肥大軟骨細胞でみられ、GLUT3は周囲の石灰化環境における単糖の枯渇に対して高親和性にグルコースを選択的に輸送し,エネルギー源として利用していると考えられる。高親和性にモノカルボン酸を輸送するMCT2の発現がみられ、MCT2で乳酸やピルビン酸を排出し,周囲環境の酸性化に寄与することで細胞外基質の改変に関与することが示唆された。
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