研究概要 |
破骨細胞の分化さらに骨吸収能の特徴を再現できる破骨細胞前駆細胞株4B12細胞を用い、破骨細胞の分化における内因性Wntシグナルの役割を解析した。 Wntに直接結合してcanonical経路とnon-canonical経路の両方を抑制すると考えられているsFrp2を破骨細胞形成系へ添加したところ、TRAP活性の減少とTRAPとCtskの遺伝子発現の減少が認められた。さらにWntレセプターFzdのコレセプターであるLrp5/Lrp6に結合してcanonical経路をブロックするsclerostinを破骨細胞形成系に添加したところ、sFrp2の添加時と同様TRAP activityの減少、TRAPとCtskの遺伝子発現の減少が認められた。以上の結果から、canonical経路が破骨細胞形成に関与していることが推測された。そこで、canonical経路で作用しているβ-カテニンをsiRNAでノックダウンし、破骨細胞分化に対する影響を調べた。その結果、形態学的には多核化の抑制、遺伝子発現に関しては、RANKLのレセプター遺伝子Tnfrsflla、RNAKからのシグナルに関与しているTRAF6、破骨細胞分化のマスター遺伝子であるNFATc1、破骨細胞の分化を調節している転写因子であるMITF、c-Myc、PPARδ、分化マーカーであるTRAP、多核、アクチンリング、ruffled border形成に関与する遺伝子(Atp6vOd2、 DC-SRAMP、 Src、 Itgb3、 Vav3、 Clcn7、 Ostm1、 Cl^-/HCO 3-exchanger Ae2)、骨基質破壊に関与している酵素遺伝子(Car2、Ctsk、Mmp9,Tcirg1)の発現が全て抑制された。以上の結果から、wntシグナルのcanonical経路に関与しているβ-カテニンは、破骨細胞分化ならびに機能発現に関与している遺伝子の発現を正に制御している可能性が示唆された。破骨細胞形成におけるWnt/catenin経路の役割を、詳細に検討する必要があると考える。
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