研究課題/領域番号 |
22592047
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
天野 滋 明海大学, 歯学部, 准教授 (90167958)
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研究分担者 |
関根 圭輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00323569)
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キーワード | 破骨細胞分化 / 破骨細胞前駆細胞株4B12細胞 / 内因性Wntシグナル / canonical経路 / β-catenin / Tm7sf4 / Sclerostin / GSK-3β阻害 |
研究概要 |
破骨細胞の分化さらに骨吸収能の特徴を再現できる破骨細胞前駆細胞株4B12細胞を用い、破骨細胞の分化における内因性Wntシグナルの役割を解析した。 Wntに直接結合してcanonicalとnon-canonical経路を抑制するsFrp2、またはLrp5/Lrp6に結合してcanonical経路を抑制するSclerostinの添加で破骨細胞形成が抑制された。β-catenin、c-Fos、NFATc1の核内移行は、M-CSFとsRANKL刺激後1日目から認められ、多核形成が認められるようになる3日目まで持続していた。siCtnnb1導入による90%β-catenin発現抑制で、TRAP陽性多核細胞数の減少が認められた。しかし、70%抑制ではその効果は認められなかった。また90%β-catenin発現抑制は、多核化に関与するTm7sf4とAtp6vOd2、波状縁形成に関与する1tgb3、Slc4a2、Ostm1、骨基質分解に関与するMmp9、そして骨ミネラル溶解に関与するClcn7遺伝子発現を約60%抑制した。70%抑制では、これらの遺伝子発現を抑制することはできなかった。さらに、GSK-3β阻害剤添加によるβ-catenin分解阻止は、TRAP陽性多核細胞形成を促進させた。以上の結果から、canonical経路のβ-cateninが破骨細胞の多核化に関与していることが示唆された。 Wnt1、Wnt2b、Wnt5b、Wnt6、Wnt9aの遺伝子発現が破骨細胞の分化段階と成熟破骨細胞で確認されたことから、どのWntがβ-cateninシグナルを促進し、Tm7sf4のプロモーター領域で転写を制御しているか検討をさらに進めることは、破骨細胞形成制御機構を明らかにする上で意義あると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-cateninが破骨細胞分化過程の多核化に関与していることが明らかにされた。第53回歯科基礎医学会学術大会で、この研究結果は発表された。今後、多核化に関与しているTm7sf4のプロモーター領域でのWnt/β-catenin/TCF/LEF経路の転写制御を明らかにし、論文を作成する予定である。しかしながら、β-cateninの破骨細胞機能発現に及ぼす影響に関しては十分な検討がなされていない。
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今後の研究の推進方策 |
siCtnnb1導入による90%β-catenin発現抑制で、骨吸収機能に関与している転写因子PPARδ、波状縁形成に関与するItgb3、Slc4a2、Ostm1、骨基質分解に関与するMmp9、そして骨ミネラル溶解に関与するClcn7遺伝子発現が50%から60%抑制される知見を得ているので、骨吸収機能、破骨細胞の形態に及ぼす影響に関して検討する必要がある。また、β-cateninシグナルが破骨細胞の分化・機能発現に重要な役割を演じていることが明らかになりつつあるので、このβ-cateninシグナルを制御する上でこのβ-cateninシグナルを作動させているWnt/Fzdの組み合わせを明らかにしていく必要がある。
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