本研究は、歯髄幹細胞および幹細胞ニッチ相互間における時空的(spatiotemporal)なWntシグナル制御機構の解明を基盤とし、TPO/MPLシグナル、NotchシグナルおよびAng1/Tie2シグナルとの相互作用の分子機構を明らかにすることにより、歯髄再生の臨床応用の可能性を詳細に検討することを目的とする。 本年度は、胎生10.5日から18.5日齢のマウス胎児の歯胚領域におけるTPO/MPLシグナルの発現状況の詳細な解析を中心に研究を行った(研究課題1)。 免疫染色法による各種蛋白発現解析:胎生10.5日から18.5日齢のマウス胎児を用いて、免疫染色法により、歯胚領域におけるTPO/MPLシグナルに関与する蛋白の発現状況に関して経時的に詳細な解析を行った。c-Mplの発現に関しては、明瞭な陽性反応を得るために、染色法にさらなる工夫が必要であると考えられた。また、今後他のc-Mpl抗体を用いた染色を行い、経時的発現状況に関して比較検討することが必要であると考えられた。他方、血管内皮細胞における増殖シグナルにはPKCの活性化が必須であるとの報告があることから、研究課題2に関連し、これまで得られたPKC発現状況の解析結果をふまえて、TPO/MPLシグナル発現状況およびPKC発現状況について比較検討を行った。本解析結果が歯髄血管形成過程の分子メカニズム解明の糸口となることが期待される。 in situ hybridizationによる遺伝子発現解析:マウスの歯胚領域におけるTPO/MPLシグナル関連遺伝子発現状況に関する経時的解析を行うため、TPO/MPLシグナル関連遺伝子のアンチセンスプローブおよびセンスプローブの作製を行った。現在ポジティブコントロール及びネガティブコントロールを用いて、作製したプロープが正常にworkするか否か確認を行っている。作製プローブが正常にworkすることが確認出来れば、in situ hybridization法により、経時的なTPO/MPLシグナル関連遺伝子発現状況の解析を行いたいと考えている。本研究により、歯髄における高次血管構築制御機構の基盤となる分子機構解明の一助となることが期待される。
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