研究課題/領域番号 |
22592053
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
島田 明美 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00339813)
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研究分担者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
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キーワード | 歯根膜 / 組織幹細胞 / アネキシンA5(Anxa5) / β-galactosidase |
研究概要 |
これまでの研究から、アネキシンa5(Anxa5)は組織幹細胞の候補の一つである歯根膜ペリサイトのマーカーとなると共に、歯の形成過程において何らかの機能を有する可能性が示唆された。本年度は、Anxa5遺伝子にLacZを挿入したAnxa5機能欠損マウスを用いて、歯周組織形成と再生過程におけるAnxa5の関与を調べた。 Anxa5-LacZ^<+/->の交配により得られたAnxa5^<+/+>、Anxa5^<+/->、Anxa5^<-/->の3遺伝子型のマウスから経日的に上下顎を採取し、マイクロCT解析と組織学的解析を行った。その結果、生後4週以降において、Anxa5^<-/->では第一臼歯根尖部におけるセメント形成がAnxa5^<+/+>に比べて少なく、歯根断面積が有意に小さかった。歯根膜組織においては、Anxa5^<+/+>に比べてAnxa5^<-/->では歯根膜の幅が有意に広かった。また、偏光顕微鏡観察下においてコラーゲン線維束に由来する複屈折性強度の低下が認められた。以上の結果から、Anxa5の機能的欠損により、歯牙萌出後の根尖部セメント形成が低下し、咬合による機械的刺激の受容によって本来生じる歯根膜基質線維形成が未熟となる可能性が推測された。 また、上顎第一臼歯の再植を行い、歯周組織再生過程におけるAnxa5-lacZ^+細胞の挙動の追跡を試みた。再植3週後のマイクロCT解析の結果、Anxa5^<-/->では、野生型で高頻度に生じる歯根膜の石灰化が少なかった。しかし、歯根膜組織中のアルカリフォスファターゼ・細胞、あるいは酒石酸耐性アルカリフォスファターゼ+細胞の分布に遺伝型による明らかな差は認められなかった。Anxa5-lacZ^+細胞数は、再植後急激に増大したが、再植前投与したBrdUとの共染色の結果からは組織幹細胞の増殖によるものか、Anxa5-lacZの発現増加によるものかは判断できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯周組織再生過程での歯根膜組織中のAnxa5-lacZ^+細胞の追跡を試みたが、細胞外に遊離したAnxa5-lacZが組織全体に分布し、Anxa5-lacZ^+細胞の詳細な解析が困難であった。また、Anxa5-lacZノックインマウスの骨における表現型が加齢に伴って出現するものである可能性があることから、当初予定より飼育期間が長期化し、表現型解析に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
予備検討の結果、これらのマウスでは、全身の骨においても、組織リモデリングの大きい領域、ならびに成長後の運動による機械的刺激の受容が大きい領域で骨形態の差が認められることから、今後、この表現型の差の詳細な解析と、その差が生じるメカニズムの解析を目指す。特に、歯周組織細胞、靭帯細胞、腱細胞と骨芽細胞の相互作用が推測されることから、これらの細胞の分離培養を行い、in vitroでの解析を進める。
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