研究概要 |
胎仔マウス顎下腺は分枝形態形成による機構によって発達する。この機構は顎下腺の上皮組織と間葉組織との相互作用によって制御されている。本研究は分枝形態形成を促進させる肝細胞成長因子(HGF)の作用が上皮細胞成長因子(EGF)とその受容体の活性化を介していることを明らかにすることである。平成22年度の研究ではHGFが顎下腺の分枝形態形成が促進することを確かめることができた。分枝形態形成の促進効果は10ng/mlのHGFで見られた。しかし、HGFの効果はEGFや線維芽細胞成長因子(FGF)に比較して弱いように思われる。HGFの分枝形態形成促進効果はHGF受容体キナーゼ阻害薬(c-Metインヒビター、PHA665752)で抑制されることが分かった。さらに、HGFを胎仔マウス顎下腺原基に処理すると上皮細胞のMAPキナーゼ(ERK1/2)の活性化が起こった。ERK1/2の活性化はHGFの処理直後に観察された。HGFの効果にEGF受容体の活性化が関与しているならば、ERK1/2はHGF処理後の数時間にも活性化が認められるはずである。胎仔マウス顎下腺はHGF処理した後、0,1,3,5,8,10,15,18および24時間で回収してERK1/2の活性化の程度を調べているが、未だ後半のERK1/2の活性化のピークを確認できていない。現在、インキュベーション時間をさらに細かく区切って検討を行いERK1/2の活性化の上昇を確認したいと考えている。
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