研究概要 |
Double-stranded RNA-dependent protein kinase (PKR)は生体防御のみならず、細胞分化にも関与する可能性がある。本研究の目的はPKRによる骨・軟骨形成調節について、解明することである。初年度は以下の成果を得た。 1.軟骨細胞への分化能を持つ間葉系幹細胞ATDC細胞へPKR阻害剤を添加すると、軟骨基質の産生が減少し、軟骨分化が抑制された。このPKRを介した軟骨分化調節にはSTAT, Osterix, Sox-9が関与することも明らかとなった。これらの結果は現在、論文作成中である。 2,PKR変異破骨細胞前駆細胞を樹立した。変異細胞はRANKLによる破骨細胞分化誘導に相違が生じることを明らかとした。またin vivoにおいてPKRは破骨細胞に強く発現していることも明らかとした。これらの結果についてはExp Cell Res誌に発表した。 3.PKRは小腸吸収上皮細胞にも発現し、さらにIEC-6細胞へPKR阻害剤を添加すると、小腸上皮への分化が抑制された。吸収上皮細胞に発現したPKRは二本鎖RNAを検知し、小腸上皮細胞にアポトーシスを誘導することも明らかとなった。これらの結果の一部はJ Cell Biochem誌に発表し、残りの結果は現在論文作成中である。 以上に示すように、現在までに軟骨細胞と破骨細胞および小腸上皮細胞のそれぞれの分化誘導とPKR発現との相互関係を明らかとし、生体防御以外のPKRの役割の可能性を示す結果を得ている。
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